
Cover photo by RYUURI
HDR(ハイダイナミックレンジ)撮影は、写真の明暗差をよりリアルに表現できる技術です。以前は、HDRとSDRの違いについて解説しましたが、今回は具体的な撮影方法と効果的な活用シーンに焦点を当てます。
HDRを適切に使うことで、白飛びや黒つぶれを抑え、より自然で臨場感のある写真を撮影できます。一眼レフやミラーレス、さらにはスマートフォンでも利用できるHDR機能を活用し、撮影の幅を広げてみましょう。
HDR撮影の仕組みと基本設定
HDR撮影は、異なる露出で撮影した複数の写真を合成することで、広いダイナミックレンジを実現する技術です。一般的に、露出を変えた3枚以上の写真を撮影し、それらを自動的に合成することで、暗い部分のディテールと明るい部分の階調を両立させます。この技術により、目で見たままの明暗バランスに近い画像を得ることができます。
カメラの種類によってHDRの設定方法は異なります。
- 一眼レフ・ミラーレスカメラ:HDRモードをオンにすると、自動で複数の露出を撮影し、合成してくれます。一部のカメラでは、露出差や合成の強度を調整することも可能です。
- スマートフォン:最近のスマートフォンにはHDR撮影機能が標準搭載されており、オンにするだけで自動的に適用されます。一部の機種では、HDRの強度を調整することも可能です。

Photo by now
HDR撮影は、適切な設定と機材の選択が重要です。特に一眼レフやミラーレスを使用する場合は、三脚を活用すると合成時のズレを防ぎ、より精度の高いHDR画像を作成できます。また、RAWデータで撮影し、後処理でHDR合成を行うことで、より自然な仕上がりを実現できます。
HDRが効果的な撮影シーン
HDR撮影は、特定の条件下で特に効果を発揮します。以下のようなシーンでは、HDRを活用することでより印象的な写真を撮ることができます。

Photo by Ryota
逆光の風景写真
夕焼けや朝焼けなど、強い光源が背景にある場合、通常の撮影では空のディテールが失われたり、前景が暗くつぶれたりしがちです。HDRを使用することで、空の美しいグラデーションを保ちながら、前景の細部もしっかりと描写できます。
室内と室外を同時に撮影
部屋の中から窓の外の風景を撮影する際、通常の露出ではどちらかが白飛び・黒つぶれしてしまいます。HDRなら、室内の暗い部分と屋外の明るい景色を同時に綺麗に写し出すことが可能です。
夜景やイルミネーション撮影
暗闇の中に強い光源が点在する夜景撮影では、通常の撮影では光が白飛びしやすく、暗部のディテールが失われがちです。HDRを活用することで、ネオンやライトアップされた建築物をより鮮やかに撮影できます。
曇り空や水面の反射
雲が多い空や水辺の撮影では、明暗差が大きくなるため、HDRを使うと空のテクスチャや水面の反射を美しく表現できます。特に、海や湖の撮影では、波の動きや水の透明感をよりリアルに描写することができます。
HDR撮影を避けるべき場面
HDRは万能な撮影技術ではなく、適さない場面もあります。以下のようなシーンでは、通常の撮影モードの方がより自然な仕上がりになります。

Photo by decomp3104
動きのある被写体
HDRは複数枚の画像を合成するため、被写体が動いているとブレやゴースト(重なった影)が発生することがあります。スポーツや動物の撮影では、HDRをオフにしてシャッタースピードを優先するのが無難です。
色鮮やかな被写体
花や料理など、発色が重要な写真では、HDRを使用すると色のコントラストが抑えられ、不自然に見えることがあります。特に、赤や黄色のような鮮やかな色合いは、HDRの影響でくすんでしまうことがあるため注意が必要です。
コントラストを強調したい場合
シルエット写真やドラマチックな陰影を活かしたい場合は、HDRを使わない方が効果的です。HDRは明暗差を均一化するため、強いコントラストが必要な写真では逆効果になることがあります。
HDR機能を上手に活用
HDR撮影は、明暗差の激しいシーンで活躍する強力なツールです。逆光の風景や夜景、室内外の混合光環境などでは、HDRを活用することで、より鮮明で臨場感のある写真を撮ることができます。一方で、動きのある被写体や色彩が重要なシーンでは、HDRを避けた方が良い場合もあります。
重要なのは、HDRをすべてのシーンで使うのではなく、状況に応じて適切に活用することです。HDRの特性を理解し、自分の撮影スタイルに合わせて上手に使いこなしましょう。