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2024.04.19

祭りの中で再び交わるご縁 | 写真家・ミスミタクマ | ISSUE #34

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cover image by mismith

世界中のクリエーターの感性や思考を深掘りする『ISSUE』。新たなインスピレーションのきっかけに。『ISSUE #34』では、大阪を拠点にストリートフォトやポートレートを撮影しているミスミ タクマさんを紹介します。

ミスミさんとは〈PiX Cypher〉と主催のアートブック展示会〈#Images大阪2024〉にて初めてお会いました。当日、展示されていたのは写真集『祭縁』。3月には写真展も開催し、日本全国の祭りをテーマに制作してきたこれまでの旅路が発表されました。

表現へのこだわりを持ち、穏やかなオーラーを放つミスミさん、実は証券会社からの転職を経て、フリーランスのエンジニアとして独立した後、写真家として活動するという経歴の持ち主です。現在、ミスミさんは「祭り」をテーマに日本全国に訪れて、現地の人々と交流し作品を制作されています。今回は、ミスミさんがどのようにして祭りの写真撮影を始めるに至ったのか、その物語に迫ります。

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Image by mismith

「エンジニアとして勤めていたある日、ウェブ制作に必要な写真素材を自分で作るためにカメラを手にしました。それがすべての始まりでした。」

当初は仕事の必要から始めた写真撮影ですが、カメラを通じて見る世界は徐々に広がり、新たな表現の自由を彼に感じさせました。

オールドレンズで変わる新しい写真の見方

ミスミさんが写真にのめり込んだもう一つのきっかけ、それはオールドレンズです。

「友人から古いレンズを紹介されたことが写真スタイルに大きな変化をもたらしました」と話すミスミさん。オールドレンズ特有の描写力や味わいが、彼の創作意欲を刺激しました。オールドレンズのちょっとした柔らかい描写、最新のレンズに比べると少しもの足りなさが生み出す、不完全さが生み出す芸術性にも魅了されていきます。

「オールドレンズを使い始めてから、写真に対する見方が変わりました。レンズごとに異なる表現が可能であることに魅力を感じました。このときの興奮は、今の作品づくりにおいて重要にしている情感とも結びついている感覚を持っています。」

テーマを決める、不自由の中の自由

カメラを始めて最初の5年間は、幅広いジャンルで撮影していたミスミさん。

「ストリートスナップなら決定的瞬間を捉え、ポートレートなら被写体を魅力的に捉えれば良い」と考え、ビジュアルを重視して撮影をしていた時期もありました。

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Image by mismith

しかし、徐々に特定のテーマに焦点を絞った写真撮影へと興味が移っていきました。

「これからも写真を楽しく続けていくためには、ただ漠然と撮り続けるのではなく、一度しっかりとテーマを決めることが大切だと思いました。」とミスミさんは振り返ります。

祭りが教えてくれた、人との絆の大切さ

ミスミさんが祭りの写真に目を向けたのは、コロナ明けのこと。たまたま訪れた地方の祭りで撮った一枚がきっかけでした。

「祭りで、久しぶりに人々の笑顔や共同体としての一体感を感じたんです。それがきっかけで、日本各地の祭りを撮影するようになりました。祭りは、人々の生き方、地域の歴史が凝縮されている場だと感じたのです。」

ポートレートやスナップ撮影を通じて、日ごろの撮影から被写体の距離感を意識していたミスミさんにとっても、「祭り」は撮影し甲斐のあるテーマでした。

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Image by mismith

心の距離が近くなる瞬間

「お祭りの写真を撮る中で、距離感について学ぶことがありました。物理的な距離だけでなく、心理的な距離や関係性も考慮するようになったんです。」と語るミスミさん、実際、撮影中は話し合いながら、被写体とのコミュニケーションを大切に気づいたと話します。

「写真の撮影許可を撮るための挨拶をきっかけに、自分も祭りの一員として受け入れてもらい、一緒に泥をかぶることもありました。」たった一言の挨拶をきっかけに、関係性を築くことができたことに喜びを感じたと振り返ります。

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Image by mismith

祭りの写真は、時に世代を超えた絆や喜びを感じさせてくれます。また、人々が近づけるきっかけづくりをするような不思議な力があるように感じられます。その上で、ミスミさんが大事にする、心地よい距離感で撮影した写真は、祭りの魅力を余すことなく伝え、多くの人々に長い余韻を与えます。

お祭りをつなぐ人たち、祭りを残すこと

祭りが賑わう明るい光景とは裏腹に、今、日本各地では祭りの存続が危機にあります。

「多くの祭りが人手不足や後継者不足に悩んでいるんです。これは深刻な問題で、無視できない現実です。写真を通じて、こうした問題に光を当てることで、もっと多くの人々に関心を持ってもらえるようにしたいです。」

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Image by mismith

ミスミさんは、祭りの感動を感じ、祭りを通して地域が協力し合い、喜びを分かち合うことの重要性を強く感じています。人々がつながる大切な瞬間を残すために、これからも「祭り」をテーマにした制作を続けたいと語ります。

「私が期待しているのは、写真を通じて社会的な議論を促すことです。祭りの特別な雰囲気や心の交流を通して、地域のイベントが生み出す価値に触れていただければ嬉しいです」と語ります。

ミスミさんの写真は、私たちが大切にすべき絆と伝統を再認識させてくれます。彼のレンズから見える世界が、さらに多くの人々の心に触れることを願っています。

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INFORMATION
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ミスミタクマ

大阪を拠点に、ストリートフォトやポートレートを中心に撮影。
2022年までの5年間で撮影した写真をまとめたフォトブック「ONE」を2023年に個人で販売。100部以上を売り上げた。 2023年より「祭り」をテーマに撮影をはじめ2024年の3月に写真展『祭縁』を開催。
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Instagram:@mismith0227
HP:mismith