MAGAZINE

photo poster project | 言葉にできないとき、写真が語りはじめる by Hank | ISSUE #161

By cizucu ·

photo poster project | 言葉にできないとき、写真が語りはじめる by Hank | ISSUE #161

cizucuが世界中で開催している〈photo poster project(フォトポスタープロジェクト)〉。cizucuに写真を投稿するだけで、フォトポスターの展示会に参加でき、まだ見ぬフォトグラファー友達と出会うことができます。

今回は〈photo poster project〉に参加されたクリエイターのHankさんに、お話をお伺いしました。

自己紹介をお願いします!

私は施博瀚(Hank)と申します。台湾と日本を行き来しながら活動している、写真を撮り、文章を書くことを軸に活動しているフリーランスのクリエイターです。

近年は、アートやカルチャーイベントの記録を中心に、都市のストリート、社会を写すドキュメンタリー、旅の記録などを撮影してきました。また同時に、旅の中で出会った人々や、その土地で生まれる物語を文章として綴っています。

私にとって写真は、単なる「作品」ではありません。世界に耳を澄まし、そして自分自身の内面に耳を傾けるための、大切な手段だと考えています。

雪国の宿舎であっても、久しぶりに訪れた芸術祭であっても、あるいは競技の場の片隅であっても、その瞬間に確かに存在した温度や呼吸を、誠実に残したいと思っています。リアルであることを大切にしながら、見る人の心にささやかな驚きを届けられる表現を目指しています。

参加したきっかけは?

日本に留学している後輩が公募企画に参加し、受賞したことでした。その後、彼はチームからインタビューも受けていて、その記事を読んだときに私は初めて、「一枚の写真が、きちんと向き合って見てもらえ、そして多くの人に丁寧に受け取ってもらえる可能性があるのだ」と感じました。

その後、〈photo poster project〉が初めて台湾で開催されると知りました。しかも、プロかどうかや使用する機材は問われず、「自分が共有したい一枚の写真」を持ってくればよい、という内容でした。
「初めて」という縁もありましたが、日頃から写真を主な表現方法のひとつとして活動してきた私にとって、最高のフォーマットだと思い、まるで参加者一人ひとりに向かって「写真の出来を気にしすぎなくていい。そのままで大丈夫」と語りかけてくれているように感じられました。

2026-01-ppp-review-by-hank-image-7

これまで台湾や日本でいくつかの合同展示に参加してきましたが、一枚の作品だけを持ち、しかも自分自身が登壇してその背景にある物語を語るという体験は初めてでした。これは、自分の写真をあらためて見つめ直し、同時に自分自身を再発見するための良い機会になるのではないかと思い、ごく自然な流れで参加を決めました。

実際に参加してみてどうでしたか?

実際に参加してみて最も驚いたのは、会場の雰囲気が「写真展」というよりも、どこか穏やかで温かな集まりのようだったことです。誰が上手いかを比べるのではなく、参加者一人ひとりが「なぜ、この一枚なのか」という問いに、真剣に耳を傾けていました。

2026-01-ppp-review-by-hank-image-11

自分の写真が大きくプリントされ、壁に貼られているのを目にした瞬間、それはまるで、過去のある時間を丸ごと展示空間に預けるような感覚でした。作品を展示しに来たつもりでしたが、実際には、見知らぬ人たちの前で、とても個人的な記憶を初めて差し出しているようにも感じられました。

2026-01-ppp-review-by-hank-image-13

台湾や日本、さまざまな背景を持つクリエイターの皆さまが写真の前に立ち、言葉を交わします。使っている言語が完全に同じでなくても、画面から伝わる「去り際に、最後に振り返る気持ち」は、自然と共有されていました。

その「理解されている」という感覚は、故郷から遠く離れたところで働くことが多く、感情を言葉にするのが得意ではない私にとって、本当にかけがえのないものでした。

今回その一枚を選んだ理由は?

この写真は、越後湯沢にある男子寮の、私自身の部屋を写したものです。その日は、そこで働く最後の日でした。朝五時過ぎに起きて身支度を整え、荷物をまとめようとしたとき、ふと「この部屋を、きちんと写真に残したことがなかったな」と気づいたのです。

2026-01-ppp-review-by-hank-image-17

今回の展示作品

そこは寮で唯一の個室で、机が置かれているのもその部屋だけでした。机の上には、会議の記録や企画書、ノート、メモ帳、そして機材の充電器が無造作に積まれていました。窓の外には、すでに明るくなり始めた雪国の朝が広がっていました。
私はカメラを三脚に据え、照明はつけず、自然光の中でシャッターを切りました。片付けも演出もせず、「ここを離れる直前の、いちばんありのままの姿」を残したかったのです。

「お世話になりました。またいつか!」
別れが得意ではない私は、最後に一枚のメモを残し、静かに寮を後にしました。できるだけ足音を立てないようにして外へ出て、そのまま歩いてこの小さな町を離れました。

この写真は、あの時間を振り返るたびに、必ず開く一枚になりました。仲間と朝四時に起きて雪かきをしたこと、ストーブを囲んで食べた夕食の時間、そして寮の中で数えきれないほどの計画が語られ、生まれていった日々を思い出させてくれます。

私にとってこの写真は、雪国で過ごしたあの時間に宛てて書いた、最後の手紙のような存在です。だからこそ、台北で過去を振り返る一枚を共有するとしたら、それは迷わず、この写真だと思いました。

photo poster project参加を迷っている人へ

もしあなたにも、「何か物語がある気がするけれど、まだうまく言葉にできない写真」や、「発表する場が見つからず、ずっとパソコンの中にしまったままの一枚」があるなら、ぜひ一度参加してみてほしいと思います。
ここは競争の場ではありませんし、立派なポートフォリオを用意する必要もありません。必要なのは、心の中にずっと残っていて、ふとしたときに思い出す、その一枚だけです。

2026-01-ppp-review-by-hank-image-21

〈photo poster project〉では、写真が丁寧にプリントされ、壁に展示されます。そしてあなたは、その写真のそばに立ち、時間をかけて、そのときの記憶を人に伝えることができます。
同時に、まったく異なる背景を持つ人たちが、それぞれの「一枚の写真」「一つの体験」「一つの記憶」を語るのを耳にすることになるでしょう。

私たちは、写真が足りないのではなく、「原来、自分はこれを大切にしていたのだ」と安心して言える場所が、足りないだけなのかもしれません。
もし今、写真や日々の生活に対して、少しだけ迷いを感じているなら、ここはとても穏やかな出発点になると思います。

photo poster project

編集部のおすすめ