
Cover photo by AYUMOON
いまやAIは、画像に含まれる建物や自然、照明といった視覚的手がかりから、撮影された場所を高精度に推定することが可能です。これまでのようにGPSデータやEXIF情報がなくても、建築様式や植生パターン、さらには地域特有の道路標識までもが位置特定の材料となりえます。
Google LensやYandex Images、OpenAIのCLIPベースのモデルなど、多くのツールが精度80〜90%で位置推定を実現しており、観光業や災害調査、考古学などに活用が広がる一方、日常的な画像共有の安全性に疑問を投げかけています。
AIの活用が変える撮影スポット探索
AIツールを活用し、長年撮影を続けてきた地元地域で見落としていた撮影スポットを複数発見したという事例もあります。具体的な地名の提案を受けたことで、創作の幅が広がり、従来のロケハンにかかっていた時間も大幅に削減できたとされています。このようにAIは、便利な道具にとどまらず、創造的な活動を支える存在として注目されています。

Photo by fuji
一方で、ツールの精度が高いため、他人が投稿した日常的な風景写真から、無意識のうちに個人の行動範囲が特定されるリスクも浮上しています。
プライバシー侵害の可能性とそのリスク
SNSへの日常写真投稿が、思わぬ位置特定の入り口になる時代です。AIは写真に写り込んだ背景から、自宅や通勤経路、通学先などを推定できる可能性があり、サイバー犯罪やストーキングの温床になる懸念も。
これまで有効だったExifデータの削除ではもはや不十分であり、AIによる画像解析の「目」を意識した新しいリスク管理が求められています。スタンフォード大学の学生たちが開発したPIGEONは、わずか35マイル以内の精度で自然風景の位置特定を可能にします。
私たちにできる“AI時代”のプライバシー対策
まず重要なのは、スマホやカメラの「ロケーション記録」を無効に設定すること。さらに、公開先を限定し、信頼できるプラットフォーム上のみで写真をシェアすることが推奨されます。

Photo by Yuya
写真の背景に写る看板や通学路、建物の外観などが「ヒント」とならないよう、投稿前の見直しも習慣化することも重要です。AIが“見破る”能力を手にした今、一人ひとりがリスクを理解し、自衛する姿勢が必要なのかもしれません。