
「写真とは何か?」から考える興味深い議論
スマートフォンのカメラで、月の細部をどの程度まで捉えることができるのだろうか?
MKBHDとして知られるYoutuberのマルケス・ブラウンリー(Marques Brownlee)氏の「写真とは何か?」という深い問いを起点に考察してみると、大変興味深い議論に広がる。

AIソフトウェアがもたらす人工的な解釈
まず、初期の白黒フィルムカメラがどのように動作するか考えてみよう。被写体を通る光をフィルムに投影し、光の残像が残し、それを写真と呼んでいた。次に時間を現代に戻し、マルケス・ブラウンリー氏がYouTubeで取り上げた Samsung のスマートフォン広報担当者のインタビューをみてみよう。
Samsungのスマートフォン広報担当者
When a user takes a photo of the moon, the AI-based scene optimization technology recognizes the moon as the main object and takes multiple shots for multi-frame composition, after which AI enhances the details of the image quality and colors.(Interviewed by WIRED) ユーザーが月の写真を撮ると、AIベースのシーン最適化技術が月を主要な対象物と認識し、マルチフレーム構成のために複数のショットを撮影し、その後AIが画像の品質と色の詳細を向上させる(WIREDによるインタビュー)
カメラの光学技術とAIソフトウェアが合せることで、月の写真をより鮮明にし、細部を引き出すための最適化を行うことができる。光学的な限界を超えて月の細部を写し出すのだ。
しかし、厳密にいえば、AI処理による画像の最適化は、あくまで写真の表現の一つであり、現実の月の姿を完全に再現しているわけではない。カメラとAIの組み合わせによって、月の写真はより美しく細微なものになるかもしれないが、それはあくまで人工的な解釈であり、個々人の主観に左右される部分である。
結論として、光学だけに基づくと、月を撮影する際には十分な明るさと適切な露出を確保する必要があるが、スマートフォンのセンサーは、最新のカメラより、”カメラとして” の技術的性能をもっているかは未知数である。 今後は、スマートフォンカメラの性能が発展することによって、光学的にリアリティのある写真が撮れる可能性も表れるだろう。
余談として、月がきれいな夜空を眺めて、日本人は「月がきれいだ」と口にして、スマートフォンのカメラを空に向ける。写し出される写真のリアリティについて意味合いを深く考えることは、写真という曖昧な言葉の意味を考え直してみる良い機会にもなるのではないだろうか。しかし、個人的な意見だが、より大事なのは、きれいな月の撮ろうとしたという意思にある気もする。