子供の頃、父はいつも怖かった。 転んで泣きじゃくるわたしを、自力で立ち上がるまでただじっと待つような人だった。 大人になり、初めて心の裡をぶつけた。 その次に会ったとき、父はなぜか坊主頭になって照れくさそうに笑っていた。それが、不器用な父なりの謝罪だったのかもしれない。 初めて二人きりで歩いた、春の桜並木。 少し前を歩く父は、段差があるたびに振り返り、指を差して行く先を教えてくれる。 その小さくなった背中を見つめながら、ふと思った。 父はあの頃から、わたしが自分の足で立ち上がって歩いていけるように、信じて待ってくれていたんじゃないだろうか。 あの日、立ち上がったわたしを今の父が優しく見守っている。

