『Read Your Photography』では、ただ見るだけでは出会えない、写真の裏側にある“物語”に目を向けます。cizucuが主催する〈photo poster project〉や、SNSを通じて集まった作品とともに、その一枚が生まれた背景やその人だけの時間を、cizucuマガジンが12言語に翻訳し、世界中へ届けます。
物語を心にしまっておくのもひとつの選択。けれど、その想いは誰かの心に静かに触れ、まだ見ぬ感動を生むかもしれません。
今回ご紹介するのは、世界中から集まった3名の作品です。
それでは、唯一無二の物語を、そっと覗いてみましょう。
beesleepy’s Story

Photo by beesleepy
beesleepy
📷 Canon EOS M50
📚 01
誰かの青春の、ほんのすぐそばを通り過ぎた。
その日は学生たちの終業式で、私はいつものように海辺へ写真を撮りに出かけていました。
そこで偶然目にしたのは、砂浜でバレーボールをする学生たちの姿。ひとりが高く跳び上がり、夕陽を背にスパイクを打とうとしていました。
海へ沈む光が残されていたのは、あとわずか数分。
その一球に触れられる時間も、ほんの一瞬。
けれど、その一瞬には、もう二度と戻らない季節の輝きがありました。
たとえイカロスの飛行がいつか墜落を迎えるものだとしても、彼がたしかに空へ手を伸ばしたことは、消えることがありません。
この写真には、そんな儚くも眩しい青春の気配が写っているように感じます。
cizucu編集部
写真に写っているのは、夕陽の中でボールを追う、ほんの一瞬の身体の動きです。ですが、その輪郭には、終業式の日の高揚や、友人たちと過ごす時間の名残、暮れていく季節の気配まで重なって見えます。沈みゆく太陽と、空へ放たれたボール。どちらもすぐに消えてしまうものだからこそ、この瞬間は強く心に残ります。青春とは、きっと後から振り返って気づく光のようなもの。この写真は、そのまぶしさと儚さを静かに閉じ込めているように感じました。
jimmychiu’s Story

Photo by jimmychiu
jimmychiu
📚 02
ヨーロッパを離れる前の、あの夏。留学生だった私にとって、その旅立ちは、学生生活に区切りをつけるだけでなく、深く愛したヨーロッパの風景に別れを告げる時間でもありました。
出発を前に、気持ちを少し落ち着けたくて、私はいちばん好きだった丘へ向かいました。そこは崖の上にあり、目の前には海岸が広がり、左手には岩壁がそびえていました。
カメラを構えながら、私はファインダーの中にひとつの三角形を見つけようとしていました。視線の先に、まず数羽のカモメが飛び込んできます。すると、まるでその構図に導かれるように、一組のカップルが画角の中へ歩いてきました。
私は息をひそめ、ふたりが三角形の中心に重なる瞬間を待ちました。時間がゆっくりと流れるように感じられ、その一点にすべての意識が集まっていきます。
そして、シャッターを切りました。
それは偶然を待つというより、記憶の中に残る風景をそっと捕まえるような感覚でした。胸の奥が高鳴り、目の前の午後が、特別なものとして焼き付いていくのがわかりました。
本当に美しい午後でした。あの光景は、ヨーロッパで過ごした日々の最後に出会った、小さな贈り物のように、これからもずっと私の中に残り続けると思います。
cizucu編集部
広大な風景の中で、偶然そこにいた人の小ささと、だからこそ際立つ存在感が写っています。切り立つ崖、静かに広がる海、遠くへ続く海岸線。その大きな時間の流れの中で、画面の下にいるふたりの姿はとても小さいのに、不思議と視線を引き寄せます。別れの前に見た景色だからこそ、この一枚には、旅の終わりと記憶の始まりが同時に刻まれているようです。偶然出会った構図が、人生のある季節を象徴する風景へと変わっていく。その静かな奇跡が美しい作品だと思いました。
Izzy Hung’s Story

Photo by Izzy Hung
Izzy Hung
📚 03
母の日、私の愛猫(Yuki)は最後のひと鳴きとともに、その生涯に幕を下ろしました。
11年ものあいだ家族に寄り添ってくれた彼女は、いつも穏やかで、私たちの暮らしの中心に静かにいてくれる存在でした。心から感謝しています。
数週間が経ち、Yukiを見送った悲しみが少しずつ日常の中に溶けていった頃、夫婦はもう一度、猫を迎え入れることを決めました。新しい命と出会い、家にまたひとつの縁を結ぶために。
日曜日の午後、車を走らせ、桃園・新屋にある動物保護施設へ向かいました。そこでは、それぞれの命が、それぞれのかたちで懸命に今日を生きていました。
ある子は柵に身を乗り出し、澄んだ鳴き声で「選んで!選んで!」と呼びかけているようでした。別の子は、少し大人びた表情で、「迎えるかどうかは、あなたが決めればいい」と語りかけているようにも見えました。
賑やかさと静けさが入り混じるその場所で、3匹の子猫たちだけが、まるでひとつの小さな家族のように寄り添っていました。
鉄のケージ越しに、互いを励まし合うように身を寄せ合いながら、「今日は来ている人が多いね。でも大丈夫。きっと私たちも、家を見つけられるよ」そう声をかけ合っているように見えたその姿に、喪失のあとにも、また新しい物語が始まっていくことを感じたのです。
cizucu編集部
鉄のケージ越しに重なる小さな前足と視線から、言葉にならない不安と、互いを支え合うようなぬくもりが伝わってきます。モノクロで切り取られているからこそ、毛並みの質感や表情、金属の冷たさがより静かに迫ってきます。ここに写っているのは、保護施設の一場面であると同時に、喪失のあとに新しい縁を探しに来た人の心にも触れる光景です。限られた場所の中で、それでも誰かを待ち、明日へ手を伸ばすような姿。その小さな命の強さとやさしさが、深く心に残る一枚です。
最後に
いかがだったでしょうか。
ビジュアルだけでは語りきれない魅力に、私たちは目を向けていきたい。『Read Your Photography』は、写真の奥にある想いや感情に目を向け、ひとつの物語として受け取るための企画です。
写っているのは、ほんの一瞬です。けれどその奥には、確かに流れ続けてきた時間と、言葉にならなかった感情があります。
どうか写真を読むように、そして頁をめくるように、味わってみてください。
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