写真を愛するクリエイターたちが語る、カメラとそのストーリー。「愛機」という存在には、それぞれの人生観や価値観が映し出されます。今回の連載では、〈Nikon Nikonos〉を愛用するdede dos filmさんが登場。
近年、フィルム写真の魅力が再評価される中で、“思い通りにならなさ”を楽しむクリエイターも増えています。今回は、水陸両用カメラ〈Nikon Nikonos〉とともに、自然の流れに身を委ねながら向き合う、フィルム写真ならではの不確かで美しい魅力に迫ります。
〈Nikon Nikonos〉基本情報
〈Nikon Nikonos〉は、Nikonが展開していた伝説的な水陸両用フィルムカメラシリーズです。もともとは水中撮影を目的として開発され、高い防水性能と堅牢性を備えていることが特徴。完全な撮影結果を求めるというより、“偶然性”を含めて作品へ昇華できる数少ないカメラです。
波乗りの先にあったカメラ
〈Nikon Nikonos〉との出会いは、沖縄に来て数年経った頃でした。コロナ禍で少し仕事も落ち着いて、ふと20数年前にやっていた波乗りをもう一度始めてみようと思ったんです。
波に乗るようになると、今度はサーファーを撮りたくなって、水中カメラを探し始めました。そんな時、〈Lomography〉のサイトで〈Nikon Nikonos〉で撮られたサーフ写真を見つけました。

Photo by dede dos film
荒くて、不完全で、それでも強く心に残る写真だった。すぐに調べて、〈Nikon Nikonos〉というカメラを見た瞬間、理由もなく惹かれました。スペックでも機能でもなく、ただ見た目が好きだったんです。
気づけば、オークションサイトで落札していました。
思い通りにならない
デジタルのアクションカメラではなく、フィルム。正直、最初は面倒だと思っていました。でも、不思議と自分には合っていた。

Photo by dede dos film
〈Nikon Nikonos〉は、思い通りになりません。
波乗りも楽しみたいし、写真も撮りたい。だから肩にぶら下げたまま海へ入ります。波に乗ったあと、沖へ戻るパドリングの時間。その時、ふとシャッターチャンスが訪れる。
波に乗ってきたローカルサーファーが、目の前を通り過ぎる一瞬を、ただ「パシャリ」と切り取る。でも同時に、このカメラはよく消えるんです。

Photo by dede dos film
巻かれた波の中でストラップが外れ、気づいた時にはもう手元にない。海の底へ沈んでいく〈Nikon Nikonos〉を、何度も見送ってきました。そして最近、また一台が壊れました。今度は水没ではなく、サーフィン中の衝撃で内部に塩水が入り込んでいた。
静かに、でも確実に終わっていました。
偶然の顔をした必然
それでも、また新しい〈Nikon Nikonos〉を迎えようとしています。なぜ何度もこのカメラを手にしてしまうのか、自分でもうまく説明できません。
でも、〈Nikon Nikonos〉でしか現れないものがあるんです。フレアやゴースト。光が壊れたような写り。
逆光で狙って出せることもありますが、本当のところは現像するまで何もわからない。
ちゃんと写っているのか、それとも全部ダメになっているのか。
ずっと曖昧なままなんです。

Photo by dede dos film
でもたまに、想像もしていなかった光が写っていることがある。にじんだ光や入り込んだゴーストが、ただの失敗ではなく、その写真を決定的にしてしまう瞬間があるんです。
それが、自分にとっての“ボーナス”でした。
水と陸のあいだ
自分にとって〈Nikon Nikonos〉は、水陸両用のカメラというより、お玉杓子がカエルになっていく、その過程みたいな存在です。
水の中と陸の上を行き来しながら、どちらにも完全には属さないまま変化していく。その曖昧な時間が、一番面白い。海にもいたいし、山にもいたい。やりたいことがいつも多すぎる自分にとって、〈Nikon Nikonos〉がちょうどいいんです。

Photo by dede dos film
どっちつかずで、でも自由で、少し不完全なままどこへでも行ける。だからこれは、ただのカメラじゃありません。
波と山のあいだを行き来するための装置であり、うまくいかないことを、そのまま引き受けるための道具なんです。光が揺れて、形がほどけるあの場所で、ちゃんと写らない何かを、もう少し見てみたい。
次の〈Nikon Nikonos〉も、きっとまた壊れる。
それでも、また海へ持っていきます。

Photo by dede dos film

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