今回は、世界各地の文化やアイデンティティを写し取るcizucuクリエイターのumai_gohanさんに、鬼怒川エリアのおすすめ撮影スポットを教えていただきました。
観光地としての現在と、かつての賑わいの痕跡が同居する鬼怒川。その“ズレ”に惹かれて訪れたというumai_gohanさんが選んだスポットは、どれも土地に残る時間の輪郭を感じさせてくれる場所ばかりです。
鬼怒川エリアを選んだ理由を教えてください
忘れているけれど忘れられてはいない観光地「鬼怒川」。かつて多くの人の流れがあった場所です。今も観光地として存在していますが、当時の賑わいとは異なる楽しみ方がされているエリアでもあります。
宿泊施設跡地は谷から生えるように立ち上がり、訪れる人を静かに見下ろしていました。訪れる人々は別のアクティビティを目的としており、その跡地はひとつの景観として成り立っているように見えます。
廃墟という言葉で片付けるには、まだ“生活の記憶”が強く残っている。観光地という言葉で捉えるには、時間が止まりすぎているようにも感じられました。過去と現在における在り方の曖昧さに惹かれ、今回の訪問に至りました。
時間が進んでいるはずなのに、どこか一部分だけ切り取られたように残っている感覚があり、そのズレのようなものを見てみたかったことも、理由のひとつです。
1. 宿泊施設跡

Photo by umai_gohan
かつて観光客で賑わっていたであろう大規模な宿泊施設跡です。構造は残っているものの、用途だけが抜け落ちた時間の空洞のように感じられます。
撮影のポイント
部屋の配置や窓の向こう、手すりのひとつに至るまで、「誰かがここで過ごした時間」を想像させられます。撮影では、人の気配が消えたことで生まれる“余白”を意識しました。

Photo by umai_gohan
そこにあったはずの動きや音、温度が抜け落ちているからこそ、空間の輪郭だけがいっそう強く浮かび上がってくるように感じました。
2. 連なる痕跡

Photo by umai_gohan
案内板やメニュー表、タバコの自販機など、かつての情報が至る所に残っています。鬼怒川を歩きながら、それらを断片として拾い上げていきます。
すべてがバラバラのピースでひとつの完成形になることはありませんが、そこにあった時間の輪郭だけが浮かび上がっていきます。
撮影のポイント
“使われていた痕跡”を追うというよりも、“使われなくなった後に残った構造”に視線が向きます。
ひとつひとつは些細なディテールでも、それらを拾い集めていくうちに、場所全体の記憶の密度が少しずつ立ち上がってくるように感じます。

Photo by umai_gohan
3. 全景
今は戻せない時間の重なりが、そのままその土地の風景として残っています。資料で当時を知ることはできても、その熱量までは触れられないように思います。

Photo by umai_gohan
撮影のポイント
この土地には確かに温泉街があり、人が集い、記憶が幾重にも積み重なってきました。残された痕跡をどう受け取るかによって、この場所の見え方はそれぞれに変わっていきます。時間が止まったのではなく、形を変えながら今も残り続けているのだと感じました。

Photo by umai_gohan
いかがだったでしょうか。
鬼怒川での撮影は、被写体を「探す」より「どう受け取るか」に近い感覚だそうです。現場では構図より直感を優先し、判断も素早く行うといいます。周辺一帯が連続した記憶のように存在するため、135mmと80-200mmを中心に距離を保ちながら空間の圧をシンプルに収めたとのこと。編集時に初めて写真が記憶として再生される感覚があるという言葉も印象的でした。
ぜひ、umai_gohanさんがおすすめする撮影スポットを訪れて、あなた自身の目でその美しさを体感してみてください。

umai_gohan
廃墟・ストリート・動物園などを中心に撮影。
単焦点レンズを軸に、引き算の構図とその瞬間の判断で“時間の密度”を切り取ることを重視している。
使用機材は偏りがあり、意図に特化した構成。
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