写真を愛するクリエイターたちが語る、カメラとそのストーリー。「愛機」という存在には、それぞれの人生観や価値観が映し出されます。今回の連載では、〈Hasselblad 907X & CFV 100C〉を愛用するむめいさんが登場。
決して“合理的な選択”とは言い難いスペックに、戸惑いを覚えながら。それでも、なぜか手放せない。なぜ、この一台でなければならないのか。子育ての合間にそっと差し込む、静かなスナップの時間。そして、1億画素がすくい上げる微細な光と色のゆらぎ。その奥にある魅力へ、ゆっくりと迫ります。
〈Hasselblad 907X & CFV 100C〉基本情報
2024年に発売された1億画素(約1億200万画素)の中判CMOSセンサーを搭載するミラーレスカメラです。ハッセルブラッド独自の色再現技術「Hasselblad Natural Colour Solution(HNCS)」。被写体本来の色を丁寧に描き出すカラーマネジメントが、多くのクリエイターを魅了しています。
許せないカメラと、それでも離れられない理由
僕はこのカメラが許せない。グリップがついていない。ファインダーがついていない。動画撮れない。AFが弱すぎる。手ぶれ補正がない。中判カメラにしては軽いが片手で長時間持ち続けるには少ししんどい。そしてお値段はボディだけで100万を超える。
2024年に発売されたカメラとは思えないくらいのスペックを誇っているカメラをなぜ使い続けるのか。私は普段3人の子どもを育てながら時間が取れるときにストリートスナップを撮影して写真を楽しんでいます。
お子さんのいるご家庭の方には共感してもらえる気がしますが、子育て中は本当に自由時間が少ないです。子どもの写真を撮るのももちろん貴重でかけがえのない時間で贅沢だと思っています。
ただそれと同じくらいに一人でカメラだけを持ち歩いて、直感に任せてシャッターチャンスをひたすら待ち構えること、これも私にとっては人生の中で欠かせない贅沢な時間だと考えています。
Photo by むめい
カメラと呼吸を合わせる
〈Hasselblad 907X & CFV 100C〉はそんな贅沢な時間を最高級に彩ってくれる至高のカメラだと、約1年ほど使い続けて感じることができました。
最初に述べたように、不便さの権化とも言えるくらいのスペックを持っているカメラですが、昔のフィルムカメラを彷彿とさせるデザインであることから、自ずと両手で包み込むような姿勢で構図をじっくり整える時間を与えてくれます。
手ぶれしないよう呼吸を整えながら立ち止まって撮影する瞬間は、無機物であるはずのカメラと呼吸を合わせている錯覚さえ覚えます。操作性面では色々苦言を呈しましたが、写真のできあがりは筆舌に尽くし難いです。
Photo by むめい
まず画素数は1億画素。これだけでもすごいと思いつつ、個人的に思うHasselbradの魅力は画素数よりもHasselblad Natural Colour Solutionという独自のカラーマネジメントシステムが最高に優秀であるゆえだと思います。
このシステムのおかげで肉眼で見たまま(あまりこういう表現は好きではないですが)の色味を写真として真空パッケージ化できる。大画面のモニターで見た時の迫力や色味の美しさは思わず「すごい…」と呟いてしまいます。
ありのままの写真の魅力を伝えたいのに、SNS等の媒体を介すと圧縮されてしまうのが本当に悔しい気持ちになります。
Photo by むめい
合理的な選択肢の向こう側
ここまで長所と短所がはっきりしているカメラもなかなかないのではないでしょうか。正直100万かけて手にいれるべきかと言われたら首を縦に振りにくい一台だと思います。
それだけ予算があったら現行フルサイズ機のハイアマ機+レンズ数本揃えられるし、撮影の快適さや焦点距離のバリエーションも増やせるので格段に撮影対象が広がるような気もします。
ただ、一度このカメラの魅力に気づいてしまうとその沼から抜け出すことはなかなかに難しいことは、このカメラを触ったことがある方は想像いただけるのではないのでしょうか。
Photo by むめい
僕はこのカメラが許せない。たとえ不便さを感じていても他の機材からは得られない写真の美しさを教えてくれたことで、他のカメラに目写りできなくなってしまったから。
むめい
むめいです。神奈川でストリートスナップを撮影したり、出張撮影依頼を受けています。
cizucu:むめい
Instagram:@muna_to_mumei






