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2023.02.27

つながり、そして内側を表現する | Masamiya Hikaruへの10の質問 | ISSUE #2

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世界中のクリエーターの感性や思考を深掘りする『ISSUE』。新たなインスピレーションのきっかけに。
『ISSUE #2』では、東京を拠点にアートディレクターとして活躍されるMasamiya Hikaruさんへ10の質問を通して、多様なルーツや独自の世界観、表現方法に迫りました。

Q1. あなたについて

母が中国人で父はオーストラリア人で、生まれ育ちは東京の日本人です(笑)今は東京拠点でアートディレクター兼デザイナーをしていて、『aesthesia(エステジア)』というブランドを手がけています。

小さい頃から絵が好きで、至る所に絵を描いてしまうことで有名だったらしい(笑)そこから、高校卒業後にバックパッカーとして世界一周の旅をしました。その経験が、今の仕事にもつながってたり。

世界一周のきっかけは、高校の中間テストを受けてる時。

テスト中に、1番後ろの席から、ふと、ペンを止めて前の席のクラスメイトたちを眺めたらもちろん、当たり前なんだけど、みんな同じように同じ姿で同じ制服で、同じテストを一斉に解いていて。

自分は、目の前のみんなの個性とか、内面の美しさを知ってたからこそ、その状況が面白く見えてきて、その時に、俗に言う「敷かれたレール」システムに沿って生きることが、個性を失うことに繋がりかねないって恐怖を感じたんだよね。

もっとみんなが自分らしい形で答えたらもっと面白いのにって(笑)

その経験から、広い視野で進路を考えたときに、日本だけじゃなくて、自分の知らない価値観や、文化、世界を知りたいっていう結論に辿り着いて、英語も全く話せないのに「世界に出よう!」って決意したんだよね。
そのおかげで、今では「価値観」が場所・文化・環境によって、数えきれないほどあって、別の国に行くと考え方が180度変わるってことも学べたし、反対に、本質は世界のどこに行っても変わらないっていうことも学べた。

世界一周中にはファッションジャーナリストとして、路上ファッションスナップを撮ったり、素人フォトグラファーながら、海外のファッションウィークに潜入したり(笑)

その頃から、ファッションや絵、写真の展示会にも行き始めるようになった。

写真に限れば、20歳のころにイタリアのミラノで見た〈ジャン=ポール・グード〉の〈So Far So Goute〉という展示会で衝撃を受けて、どこからこんな発想が出てくるのかって。

それが、写真という枠で、記憶に残る経験かな。

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ファッションジャーナリスト時代
image by hikaru masamiya

Q2. 初めて写真を撮った記憶

初めて写真を撮った記憶はないな。物心がつく前に撮ってるかなと思ってて。

というのも、お母さんが常にカメラを持ち歩いてたから、おそらく、記憶になる前にカメラを渡されて撮ったりしていたのかなって。

ただやっぱり、幼い頃は絵が好きだったな。

今も、写真はある種、技術的なものと捉えていて、エンジニア的感覚があるかもしれない。機械的っていうのもあるけど。

抽象的だけど「外側を捉える」のが写真で、「内側を放つ」のが絵、みたいな。

だからこそ、写真のファインダーを見る時は、外の風景を切り抜く感覚じゃなく、自然と絵を見る感覚を通して表現しているのかも。

その写真が、どう絵として昇華できるかは昔から常に考えてたんじゃないかな。

Q3. 機材へのこだわり

作り込んだ作品じゃない限り、機材にはあまり執着はないかな。

仕事で映像を撮ることもあるけど、映像のフレームを切り抜いて写真にすることも多い。

これも、自分が映画特有の質感が好きなのと、映像の一部を写真として切り抜く方がより一連の流れを切り取った雰囲気がある気がして。もしかしたら、映像から写真を生み出すっていうのがこだわりなのかもしれない(笑)極論、どちらもフレームだしね。

映像用のカメラは、基本的に〈Blackmagic〉っていうオーストラリアメーカーの〈Pocket Cinema Camera〉を使ってる。

普段使いの写真用だったら、35mmフィルムのインスタントカメラが好き。質感は気にするけど、メーカーにはあまりこだわりはないかな。

普段使いのカメラは「自然さ・手軽さ」が大切だと思っていて、パッとポケットから取り出して、その瞬間をその場で撮ってる。
今思えば、35mmのインスタントを使い出したのは、世界一周中にウクライナで出会って撮影して貰った、フォトグラファーのHiroyuki Koshikawa さんから影響を受けてると思う。

カメラは、世界一周の時にアンティークショップで見つけた、〈MINOLTA Riva ZOOM〉っていう35mmカメラも持ってたんだけど、旅から帰国したら壊れてしまって、2代目として、今は、〈Canon〉の〈autoboy 3〉を使ってる。

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世界一周時の一枚
image by hikaru masamiya

Q4. 最近聴いた音楽

詩人でもある〈Londrelle〉は、有名になる前から好きで、最近よく聴いてる。
彼の良い所は、5年前から歌詞だったり、内容の根本が変わってないってところ。本質的に良いものが、廃れない理由ってこういう事なんだなって学ぶ。

あとは、〈Kanye West〉プロデュースの『Sunday Service』っていうアルバムを最近聴き直してて、仕事中は〈チャイコフスキー〉とか〈モーツァルト〉、〈AOKI TAKAMASA〉さんの楽曲を聞いたり。

クラシックは作業が捗るし、みんなも試してほしい(笑)

Q5. インスピレーションを受けたクリエーター

作品制作中は、無我夢中になっているから誰かを真似て作ろうと考えることは無いかな。インスピレーションを受けた過去のたくさんの体験が、今の瞬間に表れてる感覚はあるけど。

内側を表現したいという欲求を、忠実に再現するためのマイルールな気がする。

ただ、特定の誰かではなく、歴史を辿ることでインスピレーションをもらうことは多いかも。

例えば、音楽室に飾ってあるような肖像画を撮りたいと思った時は、肖像画の歴史を辿ったり。

肖像画を撮るってなって、まず、1番最初に写真で肖像画を浸透させた人を見つけたくて、調べてたら、1850年代に〈ナダール〉というフランス人の写真家が広めたことを知ったんだよね。

その〈ナダール〉は、当時のパリの写真アトリエで、当時の著名人とか、芸術家の肖像画を撮り続けていたらしくて。面白いのが、日本でも人気な印象派の画家、〈モネ〉や〈セザンヌ〉たちは、〈ナダール〉のアトリエを借りて、そこで初めての展覧会をしたことで、今では有名な〈印象主義〉の芸術活動の起点になってたり。色々と繋がるよね。

あと、今ではドローンで空中撮影が当たり前になったけど、初めて気球で空中写真を撮ったのも〈ナダール〉って言われてる。肖像画と空中写真のパイオニアが同一人物って面白いよね。

知らないことも知れるし、歴史を辿るのってやっぱり面白い。

パリにいた時にナダールのアトリエの住所にも行ったけど、残念ながら跡地は残ってなかった(笑)

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実際に撮影した肖像画
image by hikaru masamiya

Q6. 今後使ってみたいカメラ

35mmの〈Kyocera TD〉っていうフィルムカメラは使ってみたいかな。
「Carl Zeiss Tessar T*」のレンズが搭載されてて、撮影した質感も良いし、単純に外観も好き。

あとは贅沢品だけど、〈LEICA minilux〉はずっと気になってる。
毎年値上がりしてるからこそ、今買うと1番安い価格になるっていうところも多くの人に愛されてて、希少なカメラなんだろうなって感じる。

Q7. 好きな撮影のシチュエーション

人物でいえば、相手の心と繋がってる、その瞬間に撮れた写真が1番好きかな。

感覚的なつながりを持てた瞬間、要するに被写体が、その人本来の姿である瞬間。ありのままを見せてくれて、それに自分が自然と惹かれて、入り込んでるみたいなシチュエーションが好きかな。

これ、言語での表現が難しい(笑)

風景とかだと、海外の建物を撮るのも好きかな。同じ場所に長い間あり続けるもの、自分が生きたよりずっと長い歴史のものを撮ると、その歴史の一部になれたような気がして。

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image by hikaru masamiya

Q8. イケてないなと思うこと

自分も他人も含め、自分が「イケてない」と思っていることを妥協してやっちゃうこと。

そういう時にアーティスト性とか人間性が出るなって。

Q9. 普段服を買う場所

デザイナーの知り合いが周りに多いから、貰えたり、送ってもらったりすることが殆どかも(笑)

たまに作ったプロダクトを物々交換もする。知り合いだからこそ、自分の好みに合わせてデザインを少し変えてくれたり。作るのが好きな人たちだから喜んで聞いてくれるし、そこから新しいコレクションのアイデアになったりとかもあるみたい。

あと、元々決まったショップの服の中から選択するのがあまり得意じゃないのもあるかも。

Q10. お気に入りの設定について

感覚で撮っている人間だから、設定はかなり状況によるね。当然天気とか環境とかもだけど、その日の気分の世界の見え方だったりで、変化したり。

ただ、フォーカスに限ってはマニュアルでやるのが感覚として好き。

最後に少しおっちょこちょいな話になっちゃうけど(笑)

世界一周の時に、実は〈Nikon〉の一眼レフカメラを持っていったんだけど、バックパッカーって生活環境がワイルドで、バックがぶつかったり、海辺で野宿したときに砂が入ったりで、途中からオートフォーカスが動かなくなって。

レンズを買う余裕もなかったから、マニュアルで撮るしか無くなっちゃって。

最初は、すぐ撮りたい瞬間にマニュアルフォーカスで撮るのに慣れなくて大変だったけど、1年半続けてるうちに当たり前になってきて。で、まさかのその頃にボタンが硬くなってただけで、実は壊れてない事に気が付いて(笑)

でもやっぱり慣れると使い勝手が良くて、その時にマニュアルの自由度の良さを確信したかな。

プロの方はマニュアルが基本だと思うけど、この経験のおかげで、マニュアルフォーカスを合わせる感覚が自然と身に付いたのはラッキーだと思ってる。

あと、作り物にこだわるなら、全て共通でマニュアルな部分にこそ、力を注ぎたいという思いはある。

芸術を芸術たらしめる、説明できない「何か」ってそういう小さな所から生まれると思っていて。細部に神は宿るっていうくらいだからね(笑)


iPhoneで撮影したお気に入りの一枚

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image by hikaru masamiya

INFORMATION
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MasamiyaHikaru

まさみや・ひかる/1994年東京生まれ東京育ち。オーストラリアと日本と中国にルーツを持ち、目に見えない本質を核に、アートディレクターを軸に映像やデザイン、プロデュースや、時にはモデルなどシームレスにクリエイティブ活動を行う。


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Instagram(本人):@masamiyahikaru
Instagram(aesthesia):@aesthesia.jewelry