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By cizucu ·

蒼を基調とした写真表現を通して、悲哀や未練、孤独、後悔など、言葉だけでは捉えきれない感情を写し出す写真家・蒼うさぎ。写真と絵画の境界を曖昧にしながら、水や光の流れに心の揺らぎを重ねる独自の表現を「蒼流写画」と名付け、作品制作を続けています。
そんな蒼うさぎによる個展『澪、藍して』が、2026年10月9日(金)から10月11日(日)まで、デザインフェスタギャラリー原宿 WEST 2-Cにて開催されます。
本展は、「蒼うさぎ」として開催する最後の個展。これまで写真に託してきた感情と問いを、一つの空間として形にする集大成です。

蒼うさぎ
目の前にある美しい風景や、その瞬間にしか存在しない光景を残したいという思いから写真を始める。撮影を続けるなかで、次第に「目の前にあるものを記録すること」よりも、「その瞬間、自分の心の中にあったものを写すこと」に惹かれるようになる。
現在は、水面の揺らぎや雨、光の反射、意図的なカメラの動きやブレを用いて、悲哀、未練、孤独、後悔といった感情を写真へ置き換える表現を模索している。
2026年、第100回国展・写真部に入選。国内外の公募展への出展や写真作品のキュレーションにも挑戦しながら、自分にしかできない写真表現を追求している。
cizucu:蒼うさぎ
Instagram:@aousagi0707
今回の個展の背景には、蒼うさぎ自身が人間関係やコミュニティの中で経験してきた、孤独や喪失があります。
幼い頃から宗教やコミュニティと深く関わる環境で育ち、共存や共感、人を思いやることの大切さに触れる一方、考え方や発言の違いから批判を受け、周囲との距離が生まれることもあったといいます。たった一度の行動や発言をきっかけに、それまで築いてきた人間関係を一度に失った経験もありました。
そうした経験を重ねるなかで向き合うようになったのが、「正しさとは何だろう」という問いです。ある人にとっての正義が、別の人にとっては暴力になることがある。人は誰かを「正しい側」と「間違った側」に分けてしまいがちですが、一人の人間の内側には、善意と弱さ、愛情と怒り、後悔と自己正当化など、相反する感情が同時に存在しています。
だからこそ、綺麗な感情だけではなく、人に言えない感情にも居場所をつくりたい。悲しみ、罪悪感、未練、怒り、後悔、ときには憎しみさえも、すぐに否定したり正しい答えへ導いたりするのではなく、まずは「そこに存在する感情」として見つめたい。
これまで蒼うさぎは、そうした感情を水面の揺らぎや雨、光、蒼へと置き換えながら制作してきました。『澪、藍して』では、作品を鑑賞して終わるだけでなく、誰にも言えなかった気持ちや、簡単には答えを出せなかった感情まで、そっと置いて帰れる場所を目指します。

展示準備で最も難しかったのは、作品を一枚ずつ見せるのではなく、空間全体で一つの物語として成立させることでした。
本展で扱うのは、悲哀だけではありません。罪、罰、後悔、懺悔、未練、痛みといった、決して軽くはない感情も作品に込められています。同じ作品でも、展示の順番や距離、サイズ、隣り合う作品によって、受け取られ方は大きく変わります。
「感情が強すぎて、鑑賞者を突き放してしまわないか」
「美しくまとめすぎることで、本来そこにあった痛みを薄めてしまっていないか」
何度も問い直しながら、作品の選定と展示構成を進めています。
会場には、鑑賞者が匿名で言葉や気持ちを残せる仕組みも設けられる予定です。写真を見る人と見せる人を明確に分けるのではなく、鑑賞した人の感情や言葉も、少しずつ展示空間の一部になっていく。そんな場所をつくるため、作品制作と並行して、展示レイアウト、額装、広報、物販、ウェブ上の仕組みなど、多岐にわたる準備が進められています。
写真が壁に掛かった瞬間だけが作品なのではなく、そこへ至るまでの選択や迷いも含めて、今回の個展である。その思いを胸に、試行錯誤を重ねています。
この個展でつくりたいのは、綺麗な感情だけが許される場所ではありません。
声を上げることができなかった人。家庭内暴力や支配的な人間関係のなかで、本当は言いたいことがあっても言えずに耐えている人。誰にも理解されないまま、悲しみや怒り、罪悪感、後悔、あるいは憎しみを抱えて生きている人。そうした人たちが、芸術の空間でなら、自分の感情を表してもいいと思える場所をつくりたい。
悲しみがあってもいい。怒りがあってもいい。憎しみが残っていてもいい。それらもまた、何かを大切にし、傷つきながら生きてきたなかで生まれた、確かな感情です。
声にできなかった痛みも、写真、絵画、音楽、文章など、芸術という姿へ変えることで社会へ差し出すことができる。どんな負の感情も、芸術をもって立ち上がることができる。蒼うさぎはそう信じています。

そして目指すのは、一つの正しさを教える場所ではありません。
異なる正しさや相反する感情、すぐには理解できない他者が、それでも同じ場所に存在できること。誰かを裁く前に、その人が何を見て、何を聞き、何を失い、何を抱えてそこに立っているのかを、芸術を介して一度だけでも想像してみること。そんな自由な芸術の空間です。
その理念を継続的な活動へつなげるため、今後は新しい芸術団体の設立も構想されています。
そこに「救う人」と「救われる人」という一方的な関係をつくるのではなく、孤独や喪失を抱える人同士が、同じ場所に集うこと。
「ひとりぼっちが集まれば、ひとりぼっちではなくなるのかもしれない」
『澪、藍して』は、そんな願いから始まった、小さな居場所でもあります。
「澪」とは、水の中に自然に生まれる舟の通り道を意味します。
悲しみや後悔のただ中にいるとき、そこから抜け出すための道は簡単には見つかりません。それでも、水の流れの中に澪が生まれるように、それぞれの人が、いつか自分だけの道を見つけられるように。その願いを込めて、『澪、藍して』と名付けられました。
会場では、蒼を基調とした写真作品を中心に、悲哀、罪、罰、後悔、未練、懺悔、痛みなど、人がときとして誰にも見せることのできない感情をテーマにした作品を展示します。
作品を見るだけの場所ではなく、普段は誰にも言えなかった感情を持ち込み、誰かの言葉に触れ、自分の心を少しだけ置いて帰ることのできる空間へ。
蒼うさぎとしての最後の個展、その集大成をぜひ会場でご覧ください。

個展『澪、藍して』
開催期間:2026年10月9日(金)〜10月11日(日)
開催時間:11:00〜19:00
会場:デザインフェスタギャラリー原宿 WEST 2-C
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-20-18 デザインフェスタギャラリー原宿 WEST
入場料:無料