コロナ禍による長い自粛期間の中で、外に出る気力や、写真を撮りたいという衝動が、少しずつ自分の中から失われていった時期がありました。そうした停滞の最中、後輩にモデルをお願いし、再びカメラを手に取る機会を得ました。寒さの厳しい日の撮影でしたが、シャッターを切るたびに、「写真を撮ること」そのものの面白さが、身体の奥から立ち上がってくるのを感じました。その瞬間に再燃した熱は、今でも折に触れて思い出される原体験となっています。遠くで静かに揺蕩う海の波、放り投げられた花束、ひらひらと風に揺れる緑色のドレス。そうした断片的な光景を写し取る行為を通して、散らばっていた感情や時間が、自分の中で静かに再構築されていきました。本展示は、その時の原点を思い出すための試みです。

